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11夫婦善哉 [夫婦善哉]

 「この店譲ります」と貼出ししたまま、陰気臭くずっと店を閉めたきりだった。柳吉は浄瑠璃の稽古に通い出した。貯えの金も次第に薄くなって行くのに、一向に店の買手がつかなかった。蝶子の肚はそろそろ、三度目のヤトナを考えていた。ある日、二階の窓から表の人通りを眺めていると、それが皆客に見えて、商売をしていないことがいかにも惜しかった。向い側の五六軒先にある果物屋が、赤や黄や緑の色が咲きこぼれていて、活気を見せた。客の出入りも多かった。果物屋はええ商売やとふと思うと、もういても立ってもいられず、柳吉が浄瑠璃の稽古から帰って来ると、早速「果物屋(あかもんや)をやれへんか」柳吉は乗気にならなかった。


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10夫婦善哉 [夫婦善哉]

案の定、妹の婚礼に出席を撥ねつけられたとて柳吉は気をくさらせ、二百円ほど持ち出して出掛けたまま、三日帰って来なかった。ちょうど花見時で、おまけに日曜、祭日と紋日もんびが続いて店を休むわけに行かず、てん手古舞いしながら二日商売をしたものの、蝶子はもう慾など出している気にもなれず、おまけに忙しいのと心配とで体が言うことを利かず、三日目はとうとう店を閉めた。その夜更おそく、帰って来た。





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09夫婦善哉 [夫婦善哉]

 三日経つと柳吉は帰って来た。いそいそとした蝶子を見るなり「阿呆やな、お前の一言で何もかも滅茶苦茶や」不機嫌ふきげん極まった。手切金云々の気持を言うと、「もろたら、わいのもらう金と二重取りでええがな。ちょっとは慾を出さんかいや」なるほどと思った。が、おきんの言葉はやはり胸の中に残った。


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08夫婦善哉 [夫婦善哉]

七日経っても柳吉は帰って来ないので、半泣きの顔で、種吉の家へ行き、梅田新道にいるに違いないから、どんな容子かこっそり見て来てくれと頼んだ。


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07夫婦善哉 [夫婦善哉]

二度目のヤトナに出る晩、苦労とはこのことかとさすがにしんみりしたが、宴会の席ではやはり稼業(しょうばい)大事とつとめて、


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06夫婦善哉 [夫婦善哉]

剃刀屋で三月(みつき)ほど辛抱したが、やがて、主人と喧嘩(けんか)して癪(しゃく)やからとて店を休み休みし出したが


05夫婦善哉 [夫婦善哉]

まえまえから、蝶子はチラシを綴(と)じて家計簿(かけいぼ)を作り、ほうれん草三銭、風呂銭(ふろせん)三銭、ちり紙四銭、などと毎日の入費を書き込んで世帯を切り詰め、柳吉の毎日の小遣い以外に無駄な費用は慎(つつし)んで、ヤトナの儲けの半分ぐらいは貯金していたが、そのことがあってから、貯金に対する気の配り方も違って来た。


04夫婦善哉 [夫婦善哉]

三味線(しゃみせん)をいれた小型のトランク提げて電車で指定の場所へ行くと、すぐ膳部(ぜんぶ)の運びから燗(かん)の世話に掛(かか)る。


03夫婦善哉 [夫婦善哉]

あくる日、柳吉が梅田の駅で待っていると、蝶子はカンカン日の当っている駅前の広場を大股(おおまた)で横切って来た


02夫婦善哉 [夫婦善哉]

それでも、たった一人(ひとり)、馴染(なじ)みの安化粧品問屋(やすけしょうひんどんや)の息子(むすこ)には何もかも本当のことを言った。
 維康柳吉(これやすりゅうきち)といい、女房もあり、ことし四つの子供もある三十一歳の男だったが・・


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